戸籍抄本が必要になった。本籍のある市役所のウェブサイトで郵送請求の方法を調べると「手数料450円分の定額小為替を同封の上」とある。で、近所の郵便局に出向いた。
私:「450円分の定額小為替を下さい」
局員:「10月より手数料が変わりまして・・・」
(少し間をおいて)
局員:「400円と50円の2枚より500円1枚の方が手数料込みですとお安くなるのですがどうなさいますか?」
私:「???」
この説明でパッと理解できる人はどれくらいいるのだろう? 私は分からなかった。
私:「450円請求されているので450円分の定額小為替を下さい」
局員:「分かりました。では手数料は200円となりまして。。。」
私:「200円?」
局員:「ええ、申し訳ないのですが手数料1枚100円頂戴しておりまして。ごめんなさい」(と、唐突に謝られる)
以前は1枚10円だった手数料が10月から100円に値上げされ、その結果、450円分の定額小為替購入だと計650円(450円+手数料100円×2枚)かかるのが、500円分だと計600円(500円+手数料100円)で済むという逆転現象が生じるらしい。
局員:「戸籍取り寄せですよね?」
私:「はい」
局員:「お釣の50円を返金してもらえるかどうかは自治体さんによって対応がまちまちなんですが。。。」
私:「分かりました。じゃあ500円下さい」
とりあえず戸籍抄本取り寄せに必要な定額小為替は準備できた。でも50円の不合理な出費は納得できない。
私(だんな)は生まれてからずっと本籍地に暮らしたことが無い。だから戸籍抄本が必要なときはいつも、定額小為替を使った郵送請求だった。世の中、こういう人は多いはず。ということは、この不可解な定額小為替手数料で困っている人も多いはずだ。早速、インターネットで調査開始。
ざっと検索してみて目立つのは司法書士&行政書士関係者のブログ。やはりお役所絡みには影響大の模様。
取引を定額小為替で行うことが多い同人誌の世界も困っている様子。
そして、利用者以上に困っているのは定額小為替を受け取る役所らしい。産経ニュース(2007.11.5付記事)より引用。
郵政民営化を機に、戸籍謄本などの郵送を役所に依頼する際に使う「郵便定額小為替証書」の発行手数料が1枚10円から100円に値上げされ、安価な証書を複数枚買うよりも、高額の証書を1枚買ったほうが手数料を含めても料金が安くなるという“逆転現象”が発生、利用者ばかりか自治体の現場も混乱している。正規額以上の為替を送られた自治体側は、差額を利用者に返還せねば「横領」になりかねず、職員が手間をかけて返送するしかないからだ。
別の市関係者は「500円の証書で戸籍謄本を請求した人は、証書を買う段階で50円、行政側が返却する50円を合わせると計100円もトク。正直者がばかを見る仕組みだと思う」と指摘する。
なるほど。500円の定額小為替で請求して行政からお釣り50円が返却された場合(つまり私が感じた不合理な出費が解消された場合)、総支払額は550円。一方、まじめに450円の定額小為替を送った人の総支払額は650円。その差100円。確かに正直者がばかを見る仕組みだ。
お釣の取扱いについては自治体によりまちまちだ。まずは北海道行政書士会のサイトに掲載されていた、札幌市から北海道行政書士会会長に宛てられた通達から抜粋。
手数料を超える額の定額小為替証書にて請求があった場合は、お釣りの金額分の定額小為替証書を返送しておりますが、先般の郵政民営化に伴い、定額小為替証書の発行手数料が一枚につき10円から100円に値上がりしたことから、小額の定額小為替証書を用意することができず、お釣り分として返送する取扱いを続けることが困難となってきております。 このため、地方自治法施行令第156条第1項の規定にもありますとおり、定額小為替証書でのお支払いにおいては、納付金額を超えない金額を同封されるよう貴会の会員の皆様あて周知していただきたく、ご協力をお願い申し上げます
地方自治法施行令第156条とは?
第百五十六条 地方自治法第二百三十一条の二第三項 の規定により普通地方公共団体の歳入の納付に使用することができる証券は、次に掲げる証券で納付金額を超えないものに限る。
つまり札幌市の通達は、法律で「納付金額を超えないものに限る」と決まっているから守りなさい、ということだ。一般住民向けのお知らせにもこの規定を記載している自治体がある。例えば愛知県大治町の各種証明書等の郵便請求についてから抜粋。
これまで皆様の利便性にも配慮し、交付にかかる分だけの納付を受けて、お釣り分については定額小為替で返送させていただいておりましたが、郵政民営化に伴い、定額小為替の取り扱い及び発行時の手数料が大幅に変更され、また法令では、地方自治体が定額小為替等の証券による納付の場合は「納付金額を超えないもの」に限ると規定されています。また、定額小為替の手数料については、請求者負担となりますので、今後、各種証明書等を郵便で請求される際にはお釣りの出ないように手数料と同額分の定額小為替を同封していただきますようご理解とご協力をお願いします。
一方で、お釣りは切手で返すという自治体も多い。神奈川県大和市には定額小為替に関するQ&Aという専用ページが公開されており、切手で返金するに至った経緯が丁寧に説明されている。これを読む限り、全国的にも「お釣りは切手」が標準になるようと思われる。
それにしても、50円の定額小為替を用意するのに手数料が100円かかるというこの料金設定は何なのだろう? 郵政民営化というが、民間なら絶対にこんな料金設定は行わない。調べている内に、Wikipediaで気になる記述を見付けた。
民営化当初10倍という急な値上げに反発の声もあったが、長い間の値上げ据え置き、及び証書という形状から人の手を介する作業が多く、100円の手数料でも赤字であり、ゆうちょ銀行の算定によれば1枚当たり403円のコストがかかっていたという。
本当は定額小為替なんかやめたいのにやめられない、そんなしがらみが透けて見えてくるようだ。